血管造影検査

血管造影とは、X線撮影装置を使用して血管を映し出す検査です。股関節付近を走行する大腿動脈に針を刺し、そこからカテーテルという直径数ミリの細い管を挿入し、先端を目的の血管まで進めます。カテーテルの先端から血管内にX線を透しにくい造影剤という薬剤を注入しながら、連続的にX線撮影を行います。これにより、がんなどの悪性腫瘍の鑑別が可能となります。検査中は脈拍数や血圧値の測定を行い、患者さんの状態を把握することで検査を安全に行えるように対応しています。

写真:血管造影検査の様子1
写真:血管造影検査の様子2

血管造影下治療

近年では血管造影検査下でがんの治療が可能となっています。治療ではカテーテルをがんなどの病変近くまで挿入し、抗がん剤や塞栓物質を直接注入し、病変部位を治療します。新しい器材の開発や手技の高度化によって今まで外科手術でしか治療できなかった病変も血管内治療の対象となっています。当センターでは、外科医と放射線科医が協力して、特に腹部領域の血管内治療を数多く手がけています。2016年度から開始し、2020年度は年間58例のがんの血管造影下治療を行いました(図1)。

肝癌の血管造影下治療

TACE (肝動脈化学塞栓療法)

肝癌の多くは、肝動脈からの血流によって栄養を受けています。肝細胞癌を栄養している肝動脈内にカテーテルを挿入し、通常は抗癌剤を含んだリピオドール溶液を投与した後に塞栓物質を投与して血流を遮断し、癌細胞を壊死させる治療法です。近年では抗がん剤を含浸し徐放する薬液溶出ビーズ(DEB)を用いて腫瘍血管そのものを塞栓するDEB-TACEも行われるようになってきており、当センターでも症例を選んで行っています。

TACEは低侵襲であり、肝癌治療で広く用いられている治療法ですが、局所の根治性が手術等に比較して低いため、手術やラジオ波を用いた焼灼術が適応とならない多発あるいは巨大な病変、あるいは高齢者や肝機能不良例に対して、当センターでは積極的に行っています。

血管造影で腫瘍血管を同定し、カテーテルを挿入して行います。塞栓後は腫瘍濃染が消失したことを確認して手技を終了します(図2)。

治療効果は通常造影CT等を用いて行います。治療前の造影CTで認めた早期増強域に一致して治療後のCT画像ではリピオドールの集積による著明な高吸収域を認めます(図3)。

DEB-TACEの著効例を示します(図4)。巨大な肝癌で、DEB-TACEが選択されました。治療前の造影CTで認めた肝癌の早期増強域が治療後は消失しています。

治療中の総肝動脈の造影画像、塞栓前および塞栓後の画像
図2 治療中の血管造影検査画像
TACE 治療前とTACE 治療後の造影CT画像
図3 治療前後の造影CT画像
DEB-TACE中の血管造影検査画像とDEB-TACE前後の血管造影検査画像
図4 DEB-TACE症例

その他の血管造影下治療

その他に門脈塞栓術(PVE)や部分的脾塞栓術(PSE)などを行っています。
PVEは、肝切除術の術前に切除予定葉の門脈を塞栓して非切除葉を肥大させることにより、術後の肝不全を予防するものです。PSEは、脾臓を部分的に塞栓することにより脾臓体積を縮小させ、門脈圧を低下させることで、脾腫や脾機能亢進症による汎血球減少症を改善することができます。肝細胞癌に対する観血的治療や化学療法の導入の際や大腸癌肝転移における化学療法による類洞障害に伴う血小板減少症の際などに施行しています。以下にPSEとPVEの著効例を示します。前者では著明な血小板増多が、後者では非塞栓肝の十分な肥大が得られました。

部分的脾塞栓術(PSE)の画像:PSE 治療前、PSE 治療後、PSE治療後の3D画像を用いた脾臓の体積測定画像
門脈塞栓術(PVE)の画像:門脈造影、バルーン閉塞下右門脈造影、PVE後の門脈3D-CT画像