ごあいさつ
熊本大学消化器外科教室からの5名の派遣医師により診療を行っています。
令和7年度のメンバーは、別府
透(肝胆膵外科、病院事業管理者兼務)、石河隆敏(消化器・一般外科、院長兼務)、増田稔郎(消化器・肝胆膵外科、外科長)、辛島龍一(消化器・ヘルニア外科)、織田枝里(消化器・一般外科、緩和ケア)です。
特にがん診療には力をいれています。腹腔鏡手術を含めた外科手術はもちろんのこと、血管造影下治療、内視鏡治療、局所焼灼療法、薬物療法まで、幅広く対応可能です。麻酔科常勤医の赴任により、緊急手術例も増加しています。必要時にはいつでも、連絡をいただければと考えています。どうぞよろしくお願いいたします。
当科の特色・強み
従来の消化管外科・一般外科に加えて、2016年4月から肝胆膵領域の外科治療が可能となりました。2020年4月から日本肝胆膵外科学会高度技能指導医1名、日本内視鏡外科学会技術認定医2名体制となり、低侵襲手術から高難易度手術まで施行可能です。特に肝臓領域の手術数は熊本県の病院で第4位です。肝がんに対する焼灼療法や肝動脈化学塞栓療法、薬物療法にも積極的に取り組んでいます。
2020年10月から外科医師が増員し5名となり、山鹿市出身の織田枝里医師がメンバーに加わりました。2022年4月から石河隆敏医師(現院長)が、2023年4月には辛島龍一医師が、2024年4月に増田稔郎医師が外科長として赴任しました。辛島医師はヘルニア手術の、増田医師は肝胆膵外科手術のエキスパートです。外科の陣容は着実に進化しています。 さらに呼吸器疾患に関しては、熊大病院呼吸器外科から鈴木 実 教授、池田公英 准教授をお招きして、胸腔鏡手術を中心に行っています。
2019年4月に、『がん総合的診療チーム』を立ち上げ、多職種によるがん診療連携を進めています。腹腔鏡による消化管やヘルニア手術はもとより、高難易度の腹腔鏡肝切除術の認可施設となり、積極的に取り組んでいます。同時に緩和ケアを担当しており、2022年4月からはともに緩和ケア認定医である堀 和樹医師と織田医師で緩和ケア患者を受け持っています。
対象となる症状・疾患
消化器に関連したとおもわれる腹痛、嘔吐、下痢、便秘、食思不振、体重減少等の症状がある場合には、まずかかりつけ医を受診していただき、紹介受診をお願いします。もちろん緊急性のある場合は直接受診ください。消化器内科と外科は、消化器チームとして診療を行っています。
対象となる疾患は下記のとおりです。
- 消化管 : 食道・胃・十二指腸・小腸・大腸・肛門など
- 実質臓器 : 肝臓・胆嚢・胆管・膵臓・脾臓・後腹膜など
- 良性 : 腹膜、後腹膜、ヘルニア、呼吸器、内分泌など
- 悪性 : 転移性肺癌、乳癌など
主な診療内容・検査
-
320列エリアディテクタCT
最先端のCanon社製320列エリアディテクタCTを導入し、3次元画像解析ワークステーションによる3D脈管構築や肝切除術前シミュレーションを施行しています。
-
PHILIPS 1.5T MRI
PHILIPS社製Ingenia 1.5TMRIを使用。肝特異的な造影剤を活用しています。
-
X線血管撮影装置
最新の血管造影装置による各種血管造影下治療を行っています。
-
腹腔鏡下ICG蛍光法
腹腔鏡下ICG蛍光法による肝がんの同定を活用しています。
- 造影エコー、フュージョンエコーを活用した経皮的局所焼灼療法
- 開腹手術・腹腔鏡手術(外科切除、局所焼灼療法)
- ICG蛍光法を活用した手術(大腸がん、肝がん、肝転移)
- 肝動脈化学塞栓療法(TACE)、門脈塞栓療法(PVE)や部分的脾塞栓療法(PSE)
外科における手術数は、腹腔鏡手術を中心に増加傾向にありましたが、2020年以降には新型コロナ感染症による手術休止期間等により、若干の影響がありました。ただし2023年度をボトムとして昨年からは、増加傾向にあり。2025年度には、過去最高の手術数が見込まれています。
2024年度には肝癌・肝転移に対する肝切除や局所焼灼療法に加えて、腹腔鏡下の大腸癌や胃癌の手術、胆嚢摘除術、ヘルニア根治術、虫垂切除術などを主に行っています。
疾患別の治療方針と治療成績をまとめました。消化器疾患全般の症例に対してガイドラインやエビデンスに基づいた医療を提供しています。日々の診療では患者様にとって良好なQOLが保てるように心がけ、さらには常に患者様やご家族の気持ちに寄り添う医療を心がけていきます。消化器内科の医師とも毎週カンファレンスを行い、協力して診療を行っていますので、それらのサイトも是非ご覧ください。
疾患別の治療方針と治療成績
山鹿地区には胆嚢結石や総胆管結石症が多く、可能な限り内視鏡治療や腹腔鏡手術による根治を目指しています。胆嚢ポリープにも腹腔鏡下治療を行っていますが、悪性を否定できない症例には、腹腔鏡下の胆嚢床切除、胆嚢全層摘除にリンパ節郭清を加えています。虫垂炎、ヘルニア、腸閉塞、腹膜炎などの際にも、創が小さくて体の負担が少ない腹腔鏡下手術を第一選択にしています。良性疾患に対する腹腔鏡手術施行割合は2016年以前の40%前後から70%前後に増加しました。
特にヘルニアの手術では2017年度から腹腔鏡手術を積極的に行っています。鼠径ヘルニアでは再発例や前立腺手術の既往がなければ、TEP:totally extraperitoneal repair(腹腔鏡を用いた腹膜前到達法による腹膜前修復法)を第一選択に行っています。その他の腹壁瘢痕ヘルニアや閉鎖孔、大腿ヘルニアなども症例に応じて腹腔鏡にて手術を行っています。
悪性腫瘍手術数は、2016年の新しい外科チームの派遣後に倍増し、年間90例前後で推移しています。特に大腸癌、大腸癌肝転移、肝癌、胆嚢癌などの切除例が増加しています。
悪性腫瘍手術件数の年次別推移
消化器癌による死亡数は全癌死亡の半数を超えています。消化器カンファレンス、キャンサーボード、臨床病理カンファレンスを定期的に行いながら、患者毎に最適な治療を選択しています。熊本大学病院の放射線科と遠隔読影協定を結び、専門医による画像診断を行い、熊本大学細胞病理学分野教授の菰原義弘先生に病理診断と臨床病理カンファレンスをお願いしています。
大腸癌手術件数の年次別推移
胃癌や大腸癌などの消化管癌では、その進行度や全身状態に応じて内視鏡治療、腹腔鏡手術、開腹手術を行っています。大腸癌手術件数、時に腹腔鏡手術の件数が増加しています。進行例では化学療法、放射線療法、緩和医療を適宜選択することで、すべてのステージの患者様への対応が可能です。
大腸癌肝転移例では導入化学療法後に外科切除が可能になる場合(コンバージョン症例)があり、腫瘍内科医と相談しながらその機会を逃さないように厳密な経過観察を行なっています。大腸癌肝転移症例の治療数は年々増加しており、圏域外からの紹介も増えています。同時性肝転移症例では、開腹あるいは腹腔鏡による大腸癌原発巣と肝転移巣の同時切除を積極的に行っています。
高リスク大腸癌肝転移に対するYamaga studyの成績
2024年6月には、当センターと熊本大学消化器外科との合同で「大腸癌肝転移治療の“理論と実践”-The works over decades-」を海鳥社から出版しました。
一読いただければ幸いです。高リスク大腸癌肝転移に対する肝切除、全身化学療法、局所焼灼療法を組み合わせたYamaga studyの成績を掲載します。5年生存率30%が予測されるBeppu分類による高リスク症例の検討で、5年生存率62%、5年生存者8名と極めて良好な成績でした。
熊本県における肝癌の標準化死亡比
鹿本地区は肝癌による死亡率は低率です。しかし、B型肝炎やC型肝炎のない、生活習慣病に起因したいわゆるメタボ肝癌が増加しています。2019年の肝癌の過半数がメタボ肝癌であり、さらにその半数が糖尿病 (DM)を有していました。当センター糖尿病内科や消化器内科の医師と協力して、メタボ肝癌の早期発見・治療に努めています。
肝癌治療症例数と背景肝割合の推移
肝癌の治療法には、腹腔鏡下を含む肝切除術、ラジオ波・マイクロ波局所焼灼療法、肝動脈化学塞栓療法、薬物療法などがあります。癌の進行度と肝予備能の両面を考慮して治療法を選択しており、そのすべてを当センターで施行可能です。低悪性度の肝腫瘍に対しては腹腔鏡下手術を取り入れ、患者様の負担軽減と早期退院を目指しています。 2016年の肝がん専門医の着任後、2025年3月までの10年間に延べ703件の肝がん治療を行いました。内訳は肝切除183例、ラジオ波やマイクロ波による局所焼灼療法180例、肝動脈化学塞栓療法340例でした。2015年度までは、鹿本医療圏では肝癌治療はほとんど行われておらず、地域の皆さまに貢献できていると考えています。2020年10月からは従来の分子標的治療に加えて、免疫チェックポイント阻害剤と分子標的薬の併用による治療を導入し、現在は免疫チェックポイント阻害剤2剤による最新の治療も行っています。これらの薬物治療により切除可能となり、治癒が期待できる症例を経験しています。
胆道癌・膵癌に対しては、厳密な術前検査や審査腹腔鏡を行い、安全かつ根治的な切除を心がけています。切除不能症例には化学療法や放射線療法を中心とした集学的治療に取り組んでいます。当センター消化器内科は膵胆道系の内視鏡診断や内視鏡治療を積極的に行っています。 またCT検査、血管造影検査には最新式の機器を導入しており精度も向上しております。
-
X線血管撮影装置 -
320列エリアディテクタCT
肝胆膵領域の治療の詳細は以下の項目を参照ください。2022年4月に内容を更新しています。
当センターでは日本外科学会、日本消化器外科学会、日本消化器病学会、日本肝臓学会、日本胆道学会の専門医・指導医の資格を有する常勤医による質の高い、最新の医療の提供が可能です。従来の日本外科学会認定施設に加えて、2016年から日本消化器病学会と日本肝臓学会の認定施設に指定されました。2017年には日本消化器外科学会と日本胆道外科学会の認定施設となり、高難度腹腔鏡肝切除の認可施設となりました。さらに2019年には日本がん治療認定医機構・研修施設と日本消化管学会胃腸科正規指導施設に認定されました。これらすべての認定を受けた施設は県内で3施設のみです。
化学療法は、がん薬物療法専門医である宮本英明医師とがん化学療法認定看護師、認定薬剤師を中心に行なっています。消化器癌化学療法の施行総数は以前の200例から800例超に増加しています。
学生・研修医教育
当科は教育や学術活動にも力をいれています。熊本大学、熊本国立医療センターの初期研修医や地域医療クリニカル・クラークシップに基づいた医学部学生の受け入れを毎年10名程度行っています。外科、消化器内科、整形外科を中心にローテートしており、参加型の研修と温泉のある宿舎が好評を博しています。引き続き研修医と学生の教育に尽力し、バランスの良い医師の育成を目指していきます。
学術活動
2024年には、国内学会・研究会では、筆頭演者として13演題を発表しました。内訳は、日本外科学会・日本消化器外科学会・日本肝胆膵外科学会・日本肝癌研究会・日本内視鏡外科学会・APASLが各々1題、日本ヘルニア学会学術集会3題、Microwave Surgery研究会 2題、日本癌病態治療研究会2題、等でした。内特別演題発表が7題でした。司会、座長、基調講演やInvited speakerも行いました。論文としては、2016年以降に英文論文127編 (内、Firstまたは2nd author 67編)を外科から報告しました。学会や論文の詳細については、外科業績をご参照ください。
担当医からのメッセージ
別府 透
消化器外科一般、おもに肝胆膵領域を担当しています。
当センターに赴任後10年目になります。肝がん切除例は赴任後200例を超えました。VIO ソフト凝固システム、Water
jetメス、ICG蛍光システムなどを積極的に取り入れ、手術の根治性と安全性を担保した手術の定型化を目指しています。日本内視鏡外科学会技術認定医、日本肝胆膵外科学会高度技能指導医の資格を有しており、腹腔鏡や胸腔鏡による低侵襲手術から、進行症例に対する拡大手術まで幅広く対応可能です。肝癌に対する3,000例を超える手術例の中で、約300例の腹腔鏡下肝切除を経験しました。根治性と安全性を確保した低侵襲治療の確立を目指しています。ライフワークである肝がんの集学的治療の領域では、消化器内科や腫瘍内科と協力して、切除不能例が切除可能となるいわゆるコンバージョン症例(肝細胞癌5例、大腸癌肝転移25例)を経験しました。最近では圏域外、県外から紹介していただく症例も増加しています。胆道癌や膵癌に関しても腹腔鏡を含む外科手術例が増えつつあります。
外科手術に加えて肝がんの穿刺治療、血管造影下 (IVR) 治療も幅広く行っています。肝がんの局所焼灼療法では、内視鏡下アプローチやソナゾイド造影エコー・フュージョンエコー等を積極的に活用しています。最近ではラジオ波焼灼療法に加えて、2種類の水冷式マイクロ波焼灼療法を導入し、極めて良好な局所コントロールを得ています。IVR領域では、肝がんに対する肝動脈・門脈塞栓術、脾機能亢進症に対する部分的脾塞栓術、消化管出血に対する塞栓術などに取り組んでいます。
日本外科学会、日本消化器外科学会、日本消化器病学会、日本肝臓学会、日本胆道学会の指導医・専門医として、外科全体のさらなるレベルアップを目指しています。市民公開講座、院内外での研究会や勉強会にも積極的に取り組んでいます。2023年9月に山鹿市民交流センターで第42回 Microwave Surgery 研究会を主催し、多くの肝臓治療医が全国から山鹿に集結しました。さらにがんに関する市民公開講座やがん・消化器疾患の診断・治療に関連した研究会を鹿本医師会とのジョイントで適宜開催しています。このような活動を通じて県北の医療のさらなる発展に貢献したいと考えています。
石河 隆敏
消化管外科(胃、大腸など)、肝胆膵外科(肝臓、膵臓、胆道など)の診療を担当いたします。
良性疾患(ヘルニア、胆石など)から悪性疾患・がんの治療等の予定の決まった待機的手術に加え、虫垂炎や腹膜炎などの救急疾患まで当科での対応が可能です。当科は消化器外科専門医が4名所属しており、特に消化管疾患の手術療法、薬物療法に関する専門的な診療が可能です。
また、大きく切り開く開腹のような外科手術以外にも創を小さくする腹腔鏡下手術も積極的に行っており、手術以外の低侵襲を目的とした最新の機器を使った診療にも携わっています。
各々の患者様の病気やニーズに合わせた治療の選択をこころがけており、最適な医療の提供を外科チームとして目指しております。
増田 稔郎
2024年4月から当センター外科に着任いたしました。
私は、国内・国外の有名な施設への留学経験も含め、これまでに胃や腸、肝臓、胆道、膵臓などの難しい手術や、腹腔鏡・胸腔鏡手術、消化器がんの抗がん剤治療などを多く経験して参りました。当センターでは、胃・大腸・肝臓・膵臓・胆道などのがんの手術・治療や、胆石・胆嚢炎、虫垂炎、腸閉塞などの緊急手術など、誠心誠意対応いたします。
私の診療のモットーは、「患者さんの安心、ご家族の安心、紹介医の安心、スタッフの安心」です。疾患ごとの治療ガイドラインを基本にしつつ、患者さんお一人お一人にベストマッチした安全かつ根治性の高い手術・治療を常に目指します。
微力ながら、山鹿市・近郊の地域医療に貢献して参ります。どうぞよろしくお願いいたします。
辛島 龍一
治療に際してはできるだけ患者さんとご家族が分かりやすい説明を行うよう心がけています。一般外科・消化器外科を主に担当しますが、とくに鼠経(そけい)部ヘルニア・腹壁ヘルニア手術が私の専門分野であり日本内視鏡外科学会の技術認定も腹腔鏡下鼠経ヘルニア手術(TEP法)で取得しました。鼠径部ヘルニア手術には様々な方法があり病院や担当医師によって得意な手術が異なることが多いですが、私は患者さんのヘルニアの状態や持病・内服薬など総合的に判断し、国際ガイドラインでも推奨されるリヒテンシュタイン法と2種類の腹腔鏡手術(TEP法・TAPP法)の3つから最適と思われる術式をお勧めしています。熊本県内では行う施設の少ない局所麻酔下での鼠径部ヘルニア手術にも対応できます。
織田 枝里
消化器外科一般、緩和ケアを担当します。癌の手術から化学療法、ターミナルケアまで一貫して患者様に寄り添い、納得したうえで治療を受けられるように努めます。わかりやすい説明を心がけ信頼関係を構築できるように努力します。緩和ケアでは、患者様やそのご家族が心穏やかに過ごせるようにお手伝いをさせていただきます。
医師としてまだまだ未熟ですが、信頼できる先輩方にご指導いただきながら地元である山鹿市をはじめとした地域の皆様に貢献できるように頑張りたいと思います。